2021・1・13 久保寺辰彦さん「肉筆か印刷か」

 

古書画を蒐集している方にとって気になるのは、まず真贋だろうと思います。次に気になるのが、肉筆(直筆)か印刷工芸品かということではないでしょうか。画像は大塩平八郎のために山陽が作った詩です。

右側が大塚工藝社の印刷工芸品、左側が最近都内の骨董店で直筆だと言われて購入した軸です。値段も工芸品の20倍以上。現物と私が持っていた工芸品を比べると明らかに違いがあり、確かに肉筆っぽいのです。ただ確信を持って肉筆なのかと問われると、「う~ん、微妙」という印象が正直ぬぐえませんでした。言語化するのは難しいのですが、何かが違うという印象です。しかし、このコロナ禍(緊急事態宣言前)に都内まで来たということもあって、購入しました。家に帰って、詳しく調べました。まず気になったのが購入する際には気づかなかった箱に書いてある「山陽光筆畫」という文字。「光筆画」という言葉を私は知りませんでした。

ネットで調べると小川一真が実用化に成功したコロタイプ印刷技術とありました。小川一真は、千円札の夏目漱石の肖像写真を撮影した人で知られているようです。その小川が写真技術を磨くため明治15年にボストンに渡米し最新印刷技術であったコロタイプ印刷技法を修得し、日本で初めて本格的にコロタイプ印刷を始めたようです。当時、小川が実用化に成功したコロタイプ印刷を「光筆画」と呼んでいたようです。その後、小川以外にもコロタイプ印刷で芸術作品を印刷する会社が興り、その一つが大正18年に創業した大塚工藝社でした。ただ、二つを比べると遙かに小川のコロタイプ印刷の方が肉筆に近いものがあります。

 

「光筆画」という言葉は、「デジタル光筆画」という言葉で最近は知られるようになってきたようです。青森県八戸市にある「帆風美術館」は独自開発したデジタル印刷技術を「デジタル光筆画」と名付け、作品を展示している複製画専門の美術館です。国宝など原本展示が難しい作品を多数展示しています。しかも、印刷だけではなく紙などの素材も原本を再現するようこだわっているようです。国宝級の美術作品をガラス越しではなく直に、そして物によっては手で触れてもいいようです。おまけに入館料無料。機会があれば是非いってみたいです。

 

今回の購入に際して感じたのは、作品を見て味わうポイントについてです。ついつい焦点を真贋や肉筆か印刷かにおきやすくなってしまいますが、それよりも描かれたその内容にまず注目する方がよりよく作品を味わうことができるのではないかと思いました。印刷だろうが肉筆だろうが、山陽の言いたかったことは変わりませんから。その意味では、中嶋康博さんが御自身のサイトでも言っておられるように「気の張らない印刷ものがいちばんいい」のかもしれません。

 

2020・12・26 久保寺辰彦さん「楳竹園」

 

久しぶりに投稿します。

 

「楳竹園」?宛ての頼山陽書簡です。真偽のほどは不明ですが、箱書きに「頼潔」の署名があります。

 

以下、自分なりに釈文を書きます。不明な文字、間違い等ありますが指摘していただければ幸いです。


晩際胡□阪御煩被成候ニ付 小生ニも待坐被仰付候段思召 忝奉存候 又

御加減格別と奉察候故 欣然罷出度候へども 少々待候人有之 内ニ居

申事有之 折悪遣感奉存候へども 無御構御仕舞可被下候 又々其内  此方

早々仕舞候て 茶話ニ罷出候義も可有之哉 何分御待被下ましく候     草々

頓首

                             七(八)月廿九(二)日

楳竹園主人   襄復

 

楳竹園?という人は、山陽とどういう関係だったのかも不明です。

 

2020・12・22 中嶋康博さん「頼山陽の掛軸(印刷)入手」

 

今年も終わりに近づきました。2020年の収穫の一つに頼山陽の詩書画三絶をふるった掛軸を入手しました。

 

印刷物なのでどこかで紹介済みの有名な掛軸かもしれません。また古いものなので或いは現物は現存しないかもしれません。

 

賛がなかなか厄介で解読が難しかったのですが、おおよそのところが分かりましたので拙サイトにupしました。御覧下さいませ。

 

https://shiki-cogito.net/kanshi/sanyo/Sanyo-jiku.html

 

来年もよろしくお願い申し上げます。よいお年をお迎えください。ありがとうございました。


呵得枯毫着淡痕
寒林一幅冩黄昏
西窓借得風霜氣
喚起営丘墨外魂

寒林渲淡墨則成春樹法也 然窮陰枯槁
未嘗不舎生意且持質 徴×公×何云 襄

呵し得たり、枯毫淡痕を着けるに
寒林一幅、黄昏を冩す
西窓借り得たり、風霜の氣
喚び起こす営丘墨外の魂

寒林、淡墨にて渲(くまど)るは則ち春樹を成す法なり。
然らば窮陰の枯槁、未だ嘗て生意を舎(捨)てず、
 意は且(しばら)く質を持せり。徴(※文徴明の画法)は何云(いかに) 襄(のぼる:頼山陽の名)

ホームページ編集人  見延典子
ホームページ編集人  見延典子

 

「頼山陽と戦争国家

国家に「生かじり」された 

ベストセラー『日本外史』

『俳句エッセイ 日常』

 

『もう頬づえはつか      ない』ブルーレイ

 監督 東陽一

 原作 見延典子

※当ホームページではお取扱いしておりません。

 

 紀行エッセイ

 『私のルーツ

 

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